自分勝手なさよなら
自分から呼び出した以上、理由を説明しようと思っていた。
今日は仕事でミスをしちゃって、なんだかやるせなくって…そう思いながらもこんな年下の子に愚痴るなんてとゆう気持ちもあって、核心には触れれられなかった。
内田くんは、
「村松さんは、兄弟はいます?」
「スポーツは何を見ます?」
「好きな食べ物は何ですか?」
なんてまるでお見合いのような、当たり障りのない質問をたくさん投げ掛けてきた。

私はひとつひとつ、丁寧に答えながら
「じゃあ内田くんは?」と返した。

好きな食べ物は?
チーズに卵料理、お肉全般。

好きなスポーツは?
プロ野球。やっぱりジャイアンツ。

好きなと動物は?
犬。柴犬やゴールデン。

共通点を見つける度に二人で驚き、笑いあった。
仕事のミスのことは、どんどん話せなくなっていったけど、幸せな時間だった。

あっという間に数時間が過ぎ、ほどよく酔いも回ってお会計を待つ間に、やっと私は言った。

「今日は色々あって…付き合ってくれてありがとう。
内田くんと話して癒されたよ。」
顔は見れなかったし、曖昧な言い回しになってしまったけれど。
「ありがとうなんて…むしろです。」
いろいろあったと言っても何も聞いてこない内田くんが意外だった。

お店を出て、歩き出す。
微妙な距離を保ちながらも、私のスピードを気にしてくれる横顔に気づく。

「村松さん、もう遅いですけど…少しだけイルミネーション見ていきませんか?」
内田くんが言う。
断る理由を何一つ見つけられなかった。
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