自分勝手なさよなら

スノードロップ。

日曜日。
私は親友のこずえと高円寺のカフェにいた。

こずえとは、私の学生時代のバイト先で出会った。
こずえは私の3つ上だったが、すぐに意気投合し仲良くなった。
これまでの私の恋愛遍歴もほぼ知っているし、失恋の度に支えになってくれた。
私が秀雄を紹介した夜には、「幸せになるんだね」そう言って目を潤ませてくれた。

まだ16時だというのに外はもう暗くなりつつある。
そのおかげで、この時間から女二人でカフェでビールを飲んでいてもあまり違和感はない。

「亜希、あんたって…」
こずえが息をつく。
誰にも話してはいけないと思いつつ、こずえにだけは黙っていられなかった。
「うん、軽蔑するよね…」
身につまされる思いで、視線をグラスに落とした。
「あんたって、本当にやるわね!
何その羨ましすぎる展開!」
意外すぎる反応に耳を疑う。
「いいじゃない!たまにはトキメキくらい!可愛いもんでしょ、それくらい。
それも相手は若いイケメンでしょ?羨ましすぎるわよ。」
そう言ってビールを流し込んだ。
そして慣れた手つきで店員を呼び、ワインのボトルを追加した。

「あのさ、こずえ…。私、確かに浮かれてるところもあったんだけど、これ以上は無理だし、もう会っちゃダメだって思ってるわけ。」
これじゃまるで立場が逆みたいだ。

「ふーん。だけど会社も一緒なわけでしょ?
会わずにいられるかなぁ。
まぁ反対しなくちゃいけないんだろうけどさ、ぜったいに秀雄くん傷つけないって条件なら、私はアリだと思うんだよね。婚外恋愛ってやつ。」

婚外恋愛…
恋愛?
私は、内田くんに恋してるんだろうか。
久しぶりのドキドキに酔ってるだけなんだろうか。

「私は応援しちゃうけどね。」
意外すぎる親友の反応に私は戸惑いを感じながらも、どこかで嬉しく思っていた。

「こずえが応援してくれても、私は頑張らないわよ。諦める。一度限りと思って、忘れる。」
自分に言い聞かせるように呟いて、私も残ったビールを一気に流し込んだ。


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