明日はきっと晴れるから



春町くんの斜め後ろに、紺野くんがいた。


「んー、そうそう」と言っているけど、またスマホゲームに夢中になっているから、多分話は聞いていないと思う。


紺野くんは卓球男子シングルス。

400メートル走と同じく個人種目ということは……紺野くんも初めから棄権する気なのかも。



負けたらカッコ悪いから……?

汗をかくのが嫌だから……?

女の子の応援する方が楽しいから……?


そんなの、おかしいよ……。



春町くんの考え方が間違っていると思うのに、私には何も言えなかった。


ただ、目の前の4人が遠く感じて悲しくなっただけ。



「楽人、ズルイー。
あたしも個人種目にして、棄権したかったー」


「アハハ。 もう無理じゃん。
応援してやるから、美緒と由希奈はバレー頑張れー」


「えー、頑張るとか、ダサイよー」



みんな、やる気がないんだね……。

仲間のはずなのに、こんなに近くにいるのに、私だけ遠い……。



不意に頭の中に響いたのは、中庭で聞いた結城くんの言葉。



『あの人達と、無理して付き合う意味がわからない……』



思い出してしまった厳しい言葉に、「違うよ!」と言ってしまった。



「菜乃花ちゃん? 違うって、何が?」



美緒ちゃん達と笑い合っていた春町くんが、私の顔を覗き込む。



「あ……ごめんなさい……なんでもないの……」


慌てて作り笑顔でごまかして、自分の心にも言い訳をした。


無理して付き合っているわけじゃないよ……。


春町くんは優しくて、ドキドキすることもあるから、私はきっと彼が好きなんだと思う。


私の方が、春町くん達と一緒にいたいんだよ。

多分……。



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