あなたの狂おしいほどの深い愛情で、もう一度恋ができました
「一日体験っていうのがあるんだよ。体験してダメなら辞めとけばいい」

 たしかにそれもアリだ。お試しでバイトできるのは、いい制度だと思う。
 自分に合わなければそれまで、でいいのだから。

 それが、俺がホストになったきっかけだ。

 なんてことはない。大学の友人に誘われて勧められた。ただそれだけだった。

「源氏名はどうする? 他とカブらないならなんでもいいけど。あ、カッコいい名前で」

 ホストクラブの店長は俺を見るなり採用だと即決した。

 そうか。こういうところは本名では働かないか。
 源氏名など考えてこなかったので、どうしたものかと思考をめぐらせていると、ふとある名前が頭に浮かんだ。

「じゃあ、“シュージ”でお願いします」

『私、シュージくんが好きなの』という言葉を、どうして思い出したのか、自分でもわからない。
 あの熊男に興味はないし、好きだった女の子のことですら、吹っ切れてすっかり忘れていたのに。

 こんなに安易に決定していいのかと拍子抜けしたが、俺の源氏名は“シュージ”になった。

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