あなたの狂おしいほどの深い愛情で、もう一度恋ができました
「なんでお前だけこんなに指名が少ないんだよ?」

 オーナーや店長は売上至上主義だ。
 指名の少ないホストが嫌味を言われたり、ガッツリ説教をされるところもしばしば目撃していた。

 俺には幸い常連客もいたし、太客(ふときゃく)と呼ばれる高額な金を落としてくれる人も付いてくれたから、そういう目には合わなかった。
 だが、他のホストが売上のことで怒られているのは見るに耐えない。

「シュージなんて、大してイロをかけなくてもバンバン指名が入ってるぞ?」

“イロをかける”とは、ホストが女性客に、まるで恋愛感情があるかのように振る舞う営業方法のことだ。

 色気を出してイチャイチャとした会話をすれば、喜ぶ客も多い。
 そうやって良い気分にさせておくと、必ずまた近いうちに来店してくるという算段だ。

 そのホスト自身のキャラもあるから、みんなが同じくイロをかけてもすべて成果には繋がらないのだが……。

 というか、全員が居る場で、俺とそいつを比較するような叱り方をしないでもらいたい。

 ホストをやっていてテンションが落ちるのは、唯一こういう場面だ。
 だが給料をもらっているのだから、売上の話をされるのは当前だと自分を納得させた。

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