あなたの狂おしいほどの深い愛情で、もう一度恋ができました
 確実に指名客を増やしていき、太客に高いシャンパンをどんどん開けさせた俺は、気がつけば『エルドラゴン』でナンバーワンの座にいた。

 店で俺が一番。王様だ。そう思うと非常に気分がいい。

 実態は、ここにいる悪魔たちのトップになっただけだったのに。
 このころはある意味天狗になっていて、自分の心がむしばまれているなど、まったく気づいていなかった。

 俺はさすがナンバーワンだと言われるくらいの収入を稼ぐようになっていた。
 そしてその金を惜しみなく湯水のように使うと、他よりも一段上に行けると思い込んでいた。

 家賃がめちゃくちゃ高いマンションに住み、ランクの高いベンツもポンと買った。
 完全なる金銭感覚の麻痺だ。今思うとバカとしか言いようがない。

 だが他のホストも似たような感じだったために、おかしいと気づけなかったし、俺のほうがすごいのだとマウントを取りたかったのだろう。

 マンションに帰るのは、決まって夜中か朝方だ。シャワーを浴びて眠りにつく。
 カーテンを閉め切った暗い部屋で眠り、太陽の光を数日浴びないことも多々あった。

 とにかく金だけはあるので、値段など気にせずに買いものをしていたが、それらは特に欲しいものでもなかった。
 金の使い道が思い浮かばないから、とりあえず“物”に変えていただけだ。

 毎日酒を飲む職場で働いていたのもあり、夜に豪遊して金を使う気は微塵も起こらない。
 というより、遊びたいだとか自身のためになにかやってみようとか、そんなふうに頭がまわらない。

 毎日働いて金を稼ぐ。俺にはそれしかなくなっていた。なんのために稼ぎたいか、その目的もないのに。

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