この勇気をくれたのは君だったよ
本当は直哉を離したくない。
本当は直哉をこのまま私の傍に居させたい。
けれど、直哉が好きなら直哉の幸せを私は願いたい。
『直哉、ありがとう。
あの子のとこ、行っておいでよ』
私の言葉に、直哉は私を見つめる。
“本当に行っても平気か”と問いかけたいんだろうな、あの顔…。
『大丈夫。
直哉より素敵な人を見つけるから。
だから、バイバイ、直哉』
直哉が最初の一歩を踏み出したら、
そしたらただの幼なじみに戻ろう。
『愛菜、いい男が出来たら紹介しろよ?
俺が見定めしてやるから、お前のこと本当に幸せに出来るかどうかってな!』
『なにそれ、直哉、何様のつもり?』
『お前のお兄様のつもり、だけど?
大事な妹を託すんだから、それくらいして当然だろ?』
『私は直哉の妹でもないって。
まぁ…弟扱いから妹になっただけでも、一応は女扱いになってるけどさ…』
『約束な、絶対にそういう奴と出逢ったら会わせろよ』
そう言ってにこやかに微笑む直哉。
私も思わず直哉に笑みを向ける。
私、直哉を好きになって良かった。
直哉を好きになれて、本当に良かった。
例えそれが叶わなくとも、それでもこうして恋をすることができて、本当に良かった。
直哉、ありがとう。