この勇気をくれたのは君だったよ
『………何をすればいい…?』
震える声。
震える瞳。
『そうだなー…まずは私にキスしてよ?』
私はそう言って、自分の顔を直哉に近づける。
『……けど、俺は吉住のこと』
『吉住、吉住ってうるさいよ、直哉』
触れた、直哉と私の唇ー…
また直哉の唇を塞ぐキスをする。
『分からない、直哉?
付き合うってことはこういうこともするの。
それ以上のことも…。それとも直哉は私がこういうことを好きとも思っていない人と続けさせるの?』
ねぇ、直哉。
その震える瞳に私を映してよ。
あの子じゃなくて、私をー…
『直哉、私、今から別の人のところに行く約束があるんだけど。
行ってもいい?直哉からキスしてくれないなら私、その人の所に行くんだけど?』
そう言って私を悲しそうな目で見つめる直哉ー…
あの子を見つめる時は優しい目なのに、私の時はそういう目、なんだー…
『行くね、直哉』
私は直哉に背を向け、そこを離れようと足を動かした、
その時、ぐいっと腕を引っ張られる。
勢いある引っ張れかたに直哉の方に振り向く形になり…
そして直哉の顔が私の顔に近づいてきたー…
合わさる唇に私の目は大きく見開いた…。
それが直哉からの初めてのキス、だった。
『…お前にキスした。
だから好きじゃない男とそういうこと簡単にすんな!』
直哉の目は怖いくらいに真剣で、
思わず私はその視線から逃れるかのように、直哉から視線を外した。