横顔の君




それから数日後、私は鏡花堂を訪ねた。
またいつものファンタジー小説を買うのと、それと、先日買った同人誌を照之さんに貸してあげようと思って…



レジに向かおうと思ったら、ちょうどお客さんがいるのが見えたので、私は手前の本棚の影でなにげなく本を見ていた。



「可愛いですね。」

「そうでしょう?気に入ってるんです。」

お客さんとの会話が聞こえ、それからお客さんが立ち去ったのを確認して私はレジに向かった。



(あ……)



レジにはあのペンギンがいた。



「あ…吉村さん。こんばんは。」

「こ、こんばんは。」

「吉村さん、今、このペンギン、可愛いって誉められたんですよ。」

「え…そ、そうなんですか?」



それじゃあ、さっき気に入ってるって言ってたのはこのペンギンのこと?
そうわかったら、なんだか胸がじーんとした。



馬鹿みたい。
照之さんは、ただこのペンギンが気に入ってるってだけで、私を気に入ってくれてるわけじゃないのに…
なのに、そうわかってもなんだか嬉しくてたまらなかった。



「あ、あの、今日もこれをお願いします。
それと、これ…」

「あぁ、同人誌ですね。
ありがとうございます。
どうでしたか?」

「どちらもすごく面白かったです。
正直言って、素人さんの書くものだからあんまり期待してなかったんですけど、内容も深いし、文章も上手でびっくりしました。」

「良い作品に出逢われたんですね。良かったです。
僕の方も持って来ましたよ。
どれでも好きなのを持って行って下さいね。」

そう言いながら、照之さんは私の前に紙袋を差し出した。



先日のイベントで、後で交換して読めるようにと、私達は別の本を買うことにしたのだった。
ただ、私は二冊しか買えなかったのだけど…



「隠岐さんはもう読まれたんですか?」

「はい、今日持って来たのはもう読んだものです。
まだまだ読んでないのがありますから、楽しみです。」
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