魔王のオモチャ






「ほら、飲めよ
俺の血が大好きなんだろ?

いくらでも飲ませてやるよ
ほら、飲めよ」





『…………』










俺は、魔法陣を足で消し
オヤジの目の前に肩を出しながら言った











「あのイカれた女王に聞いた
オヤジ、あんた俺を人間に戻したとき

俺の血を飲んだらしいな?


変だよな?
俺の首や肩には、オヤジが噛んだ噛み跡がねぇ



ということは、オヤジ。あんたは、人間になった俺の血を飲んでねぇ

俺の血は、あんな大好物だといっておいて
飲まなかった


俺は、不思議に思ったよ
何故わざわざ周りの奴等に俺の血を飲んだと演技をしたのかってな……」








『………………』








「考えた末に、一つの結論に至った

俺は、普通の人間じゃねぇ……


俺は、………勇者なんだってな……」








『………………』











オヤジは、俺の言葉を黙って聞いて何も反論しなかった










「今の勇者……アイツは、オヤジが創り出した偽勇者だ

だから、本当の勇者がいてもおかしくはない



勇者の剣だってそうだ
オヤジが造ったと言っていたが、悪魔が入れない場所に置かれていたんだろ?

オヤジ、悪魔のあんたがどうやってあの聖域に入り剣を置けたんだ?



あの剣は、勇者の素質があるもの又は、勇者しか手に入れられないもの

勇者……光は、別世界から来たヤツだ
元々この世界にいたヤツよりは、異質な存在だ



だから、勇者の素質があると思われ
あの剣を手に入れられたんじゃないのか?



俺は、勇者と戦っていたとき
あの剣を手に取れた。おかしいだろ
あの剣は、俺を拒まなかった



しかも、オヤジ
あんたは、今の俺の血を飲んでいないことを踏まえると……


俺は勇者か勇者の素質があるということだ



光と俺、どっちが本当の勇者かなんてわかりきってる



オヤジが連れてきた偽勇者……光じゃなく

本当の勇者は………俺だ」











薄々気づいていた

周りと俺は、どこか違うと……



生まれたときから一人

両親という存在はいなかった

飯を食わなくても生きてこれた




悪魔になってからもその違和感は続いていた

純粋な悪魔より魔力が強すぎること……



普通の人間でも、上級悪魔になれるかどうかだが……

俺は、悪魔になってすぐに魔王クラスの魔力を得ていた




おかしすぎた

だが、気づかないフリを俺はしていた




今更、勇者になったところで戻れるわけない

俺は、魔王の方が合っているのだと……







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