彼に惚れてはいけません
結婚しようと言ってくれた吉野さんは、帰国してすぐに元の奥さんと娘さんに連絡を取ったと言っていた。
いつか娘さんにも会ってほしいと言ってくれて、私はすごく嬉しかった。
私と吉野さんは、家族になる。
幸せな旅の思い出を思い出しながら、仕事をした。
ミスはなかったけど、ニヤけ顔が止まらなくて、大変だった。
「じゃ、先に下で待ってますんで」
わざとらしく、他人行儀にそう言って、会社を出た中村さん。
ああいうことするから、社内の人に誤解されたりして、嫌なんだよね。
「中村君とデートなの?」
大先輩のお局さんが、ニヤニヤと私にすり寄ってくる。
「まさか!違いますよ!休みの間に、代わりに対応してくれた仕事のことです」
メイク直しもほとんどせずに、下に降りると、いかにも待っています!的に、ビルの前でしゃがみこんでいた。
「いいバーあるんだけどどう?」
「いえ、あの近くのカフェでいいですか。そんなに時間ないので」
会社に一番近いカフェへと向かっていた。
その時、前から歩いてくるひとりの男性が目に入る。
あんなに一緒にいたのに、久しぶりだなってなんだか見とれちゃうくらい素敵な人。
私の未来の旦那さん、吉野和也さんだった。