彼に惚れてはいけません
「佐々木さん、今夜予定は空いているかな」
吉野さんにときめいていると、突然声をかけられて、ハッとする。
「え?」
声の主は、インテリア会社の岡田社長だった。
「今晩、食事でもしながら、商品の提案してもらおうかと思うんだが、どう?もちろん、君の食べたいもの、ごちそうするよ」
こういう誘いは、とても多いのが事実。
会社的には表向きは断るようにという方針だけど、上司はそれで仕事が取れるならどんどん行け!って考え方。
こういう時、女性であることを痛感させられるんだ。
男性社員の場合、本当に提案する為だけに飲みに行くんだと思う。
自分が女性であるがゆえに、変なことまで考えてしまい、相手を疑ってしまったりしてしまう。
「今日は都合悪いのかな?」
黙っていると、岡田社長が優しく声をかけてくれた。
ただの優しい人なんだと思う。
余計なことを考えちゃう私がおかしいんだ。
「それなら、社長。俺も一緒に参加しちゃおうかな~」
と軽い口調でその場の空気を変えてくれた吉野さん。
「おいおい、吉野君は肉が食べたいだけだろう」
「ははは。バレました?」
笑いに包まれる部屋の中、私はうまく笑えないまま、固まっていた。