彼に惚れてはいけません

「まずは、レンタルで1ヶ月事務所で使ってもらうっていうのはどうでしょう。空気清浄機は目に見えて変化があるわけではないので、まずは音の静かさや置き場所の確認の為に一度置いてもらって、今の仕事の邪魔にならないか、そこが大事になってきます」

肉を食べ終えたタイミングで仕事の話を盛り込む。

「確かに、目に見える効果ってないから、難しいだろう。空気が綺麗になりました!って言われても、誰にも見えないからね」

「アレルギーの方や、小さなお子さんには、効果が見えると思います。咳き込む回数が減ったり、風邪を引きにくくなったり、という効果です。1ヶ月ではそこまでの効果は期待できませんが、そんなに場所を取らないということと、いかに静かかということを知ってもらいたいです。それとメンテナンスの必要もありません。定期的にうちの方からメンテナンスの担当者が行きますので、ご安心ください」

時計を見ると、8時を回っていた。

この店だけで終わりにしたい、と思い、ぐぐっとお酒を飲む。

酔いつぶれたふりをするのもいいかもしれない。

「しっかりしてるねぇ。若いのに、説得力もある。なかなかいい筋してるじゃないか」

なかなか本題に入ろうとしない岡田社長は、私のグラスが空になったことに気付き、ワインを注ぐ。

「いい飲みっぷりだねぇ。ますます気に入った!」

「私じゃなく、商品を気に入ってもらえると嬉しいんですけど」

と返すと、はははと笑い、両方気に入ったよ!と言った。



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