彼に惚れてはいけません
「とりあえず、乗ろう」
と耳元で言った吉野さんは強引にタクシーに乗り、私を引っ張る。
「岡田社長、俺も乗っちゃった!すいません」
「どうして、吉野君が乗ってるんだよ!降りろ!」
「まぁ、そう言わずに。バーに行くなら、俺も一緒に良いですか?社長から、空気清浄機の提案、お前も聞いて来いって言われたんですよ。うちの会社も導入してもいいかなって思って。だから、佐々木さん、岡田社長と俺、ふたりに説明してもらえます?」
黙ったままの岡田社長だけど、決して不機嫌ではなさそうだった。
これが吉野マジック。
すんごく理不尽なことをしているんだけど、憎めない。
と、いうか
本当に現れた。
この人は、私の運命の人だとしか思えない。
左手は握られたままだった。
安心する、温もり。
さっきまでの恐怖が消えていた。
吉野さんに守られたいと強く思った。