彼に惚れてはいけません
「で、もう契約したんですか?岡田社長」
自然体の吉野さんの話し方が好きだ。
「いや、まだだけどお試し期間としてまずはレンタルしてみようかという話なんだよね、佐々木さん」
私は、はいと小さく答えた。
「さすが!!やっぱり上場企業の社長さんは違いますね。時代の先端行ってますよね。まだあまり知られていない光触媒の空気清浄機を導入するとなると、ますます空間演出の幅が広がりますね。これからは見えない清潔を求める時代だと思うんです。子供のいる家庭なんかは、ウイルスや菌が大敵ですからね!それをモデルハウスなんかに置いたら、絶対に食いつきますよ」
この人、うちの会社に引き抜こうかなって思っちゃうくらいの営業トーク!
私達営業がいつも言いたくても言い過ぎになっちゃうから言えないことを言ってくれた。
「そう、それを俺も考えていて。空気清浄機と絡めたインテリアの提案なんかもできるんじゃないかと思ったんだ。光、匂いと一緒に空気もね」
「さすがです!岡田社長!佐々木さんもいい人に出会いましたね。この人、本当に立派な人でねぇ、そこらへんにいるセクハラ社長とは違うんだよ。今日も美味しいお肉ごちそうになったでしょ?あの店、俺も連れてってもらったことあるんですよ」
「そうなんですか?すごく肉厚で美味しかったです」
手を握り合ったまま、話していた。
「はは、それほどでもないよ」
と岡田社長はまんざらでもない感じで笑った。