彼に惚れてはいけません
ふたりは知り合い?
訳がわからず、ポカンとしていると、吉野さんが説明してくれた。
この運転手さんは吉野さんの会社の社長もよく運転してもらう人で、吉野さんとも顔見知りだったんだって。
で、吉野さんは今日の店がどこかわからなかったけど、何軒か思い当たる店を探して、やっとさっきのお肉屋さんに辿りついた。
タクシーが停まっていたから、絶対にここだとわかったんだって。
「しかし、僕だって、いざとなったらどうしていいかわかりませんでしたよ」
「いや、すまない。俺もいつ割り込んでいいのかタイミングが掴めなくて」
タクシーを見つけた吉野さんは、タクシーの運転手さんに、もしも私が危ない目に遭いそうだったら助けて欲しいと頼んでいた、と。
乱入する予定で、タクシーが見える場所で待っていてくれたんだって。
「幻想が見えたのかなって思った」
と私が呟くと、吉野さんが耳元で言った。
「そんなに俺に会いたかったんだ」
そんなことないです!なんて言えなかった。
だって、本当に会いたくて会いたくて仕方がなかったから。
「うん」
と素直に頷くと、タクシーが静かに停車した。