彼に惚れてはいけません
「ため息、ついた?深呼吸はいいけど、ため息はダメ!疲れてるならまた、箱庭カフェでも行く?」
「行く!!行く!!!!行きたい!!」
といきなり元気になり、大声で返事をしてしまった。
「はい、素直でよろしい」
大好きな大きな手が伸びてくる。
私の頭をボールを掴むようにガシっと掴み、片方の口角を上げて笑った。
その笑い方は中村亮司の表情に似ていたけど、かっこよさが全然違って、ドキドキした。
同じことをしてもこうも違うものなんだな、としみじみ感じていると、聞き慣れた声が背後から聞こえた。
「そうっすねぇ~」という軽い話し方。
振り向かなくても、毎日オフィスで聞き飽きた声なので誰だかわかる。
中村亮司だ。
絶対に鉢合わせだけは避けたい。
私は、バレないように体を少し横に向け、中村さんからは絶対に顔が見えない角度で座り直す。