御曹司さまの言いなりなんてっ!
専務の表情には自信が満ちあふれていた。
意見の有効性云々に関わらず、きっと全員が自分に従うはずだと確信しているんだろう。
果たしてその通りになり、責任者のひとりが無言で手を挙げた途端、堰を切ったように次々と皆の手が挙がっていった。
牧村さんがさっき言っていた『部長は優秀だが、周囲に問題がある』って、このことだったのね。
専務に逆らう者は、いない。
いったんこの人を敵に回して目をつけられようものなら、二度とこの楽園で生きてはいけないから。
だから生贄を差し出して、自分の身に害が及ばないように息を潜めているつもりなんだ。
パーティー会場で部長の窮地を見て見ぬふりしていた社長の姿と、ここの全員の姿が重なって見えた。
孤立した部長が難しい顔をして黙り込んでいる。
言いたいことはあっても賛同してくれる人物が誰もいないのだから、結局どうにもならないのは目に見えていた。
最初から決まりきった、予定通りの状況に満足したらしい専務が断言する。
「どうやら決まったな。それでは……」
「お待ちください専務。僭越ながらチームの一員として、意見を述べてもよろしいでしょうか?」
私の声に、専務が虚を突かれたように言葉を失った。
皆がギョッとした顔で一斉にこっちを向く中、私は表面上、平然とした顔で言葉を続ける。
「ここで結論を出してしまうのは、いささか早計かと思います」