御曹司さまの言いなりなんてっ!
さすがに女性社員の顔付きは変わり、男性社員は落ち着きなく視線を彷徨わせる。
それでも誰にも批判されることのない専務は、まるで若き専制君主のようだった。
「なんだそれは。大量生産の通販か? 勘弁してくれ。よくも恥ずかしげもなくそんな姿でこの場に出席できるものだな」
上等なスーツの群れに囲まれた、みにくいアヒルの子を眺めながら君主は私を非難し続ける。
たいして長くもない足を組み、威圧するようにクイクイとイスを動かし、止めどなく言葉を続けた。
「責任者というものは会社にとって、皆に見られる一番の顔なんだよ。君は会社の顔に泥を塗るつも……」
「口を慎め。直一郎」
凛とした声に遮られ、ピタリと専務の声が止まった。
しゃべりかけていた状態のままで口をポカッと開き、呆気にとられた視線を私の顔から移動させる。
その先には、端整な顔立ちを厳しく引き締めた部長がいた。
「……なんだって?」
「黙れ、と言ったんだ。そして彼女への発言を撤回して謝罪しろ」
「な、なんだその口のききかたは! 上役である僕に向かって失礼だろう!」
口と同じように丸く開いていた専務の目が、急速に険しく細くなっていく。
クイクイと動かしていたイスの動きを止め、専務は攻撃的な口調で部長を非難した。
「あなたは確かに僕の兄ではあるが、社内ではそんな身内意識は捨ててもらおう! まったく部長は社会人としての常識に欠けているぞ!」
「それはお前だ。直一郎」
「な……!?」
「今のお前の発言を、我が社の専務の公式発言として認めるわけにはいかない。だから俺はお前の兄として諌めるんだ」