御曹司さまの言いなりなんてっ!
専務の表情も同じように怒りに染まっているけれど、赤らんだ顔で兄を睨む姿には、品性といったものが感じられない。
完全な貫録負けをさらしている姿は、滑稽にすら見えた。
でもそんな専務の姿なんかもう、私にはどうでも良かった。
目の前に立つ部長の姿を見つめるこの胸は、窓の外の陽射しのように熱く灼けて、疼きすら感じられる。
これまでに何度か経験したことのある、この疼き。
この、熱を伴った疼きは……。
「ちょっと失礼するよ」
その時、ノックもなしに突然開かれたドアの音に全員が虚を突かれた。
視線の集中するドアの陰から総白髪の男性が姿を現した途端、場の空気が一変してしまう。
「か、会長!?」
「お祖父様!?」
登場したのは、真っ白なちぢみの開襟シャツを着こんだ、涼しげでラフな装いの会長だった。
パーティーの時と同じように、人懐こい笑顔で会議室の中に入ってくる会長の姿を見ていた全員が、我に返ってガタガタ席から立ち上がり、慌てて一礼した。
「やあ、皆元気かね? 今日も暑いねえ」
「お、お祖父様。突然で驚きました」
「びっくりしたかね? やあ、そうかねそうかね。ははは」
飄々とした会長は、イタズラが成功して喜ぶ子どものような顔で笑った。
そして私と視線が合うと、さらにパァッと明るい笑顔になって大声を出す。
「おおー、成実ちゃんーー!」