御曹司さまの言いなりなんてっ!

「お、お祖父様。お元気そうで、なによりです。ところで今日は突然どうなさったんですか?」

「うん、ちょっと用事があってね」

「用事? どんな御用事ですか?」


 会長は専務との会話を続けながらも、私の手を撫でながら決して放そうとしない。

 そんな様子を専務が、渇いた笑いでなんとか誤魔化そうとした。


「まさか遠山に会うためだけに、わざわざ会社へいらしたわけじゃないでしょう?」

「なに言ってるんだい。そんなわけがないだろう。ははは」

「そ、そりゃそうですよねえ! ははは!」


 そう言って互いに笑い合うに専務と会長に合わせ、皆も一斉に笑った。

 こ、このままうまく流して、この現状も誤解も無かったことにしてしまいたい。

 ところがそんな私の願いも空しく、次に会長が放ったひと言が、私の顔から血の気を引かせた。


「成実ちゃんとぜひ一緒に、旅行がしたいと思ってね」

「……は?」

「だから、成実ちゃんをお泊り旅行に誘いにきたんだよ」

「…………」


 もはや隠しようもないほどに気まずく張りつめた空気が、会議室中を覆う。

 見てはいけない物を見てしまった表情で立ち尽くす皆の目線が、落ち着きなく宙を彷徨った。

 この空気に追い詰められて完全に退路を断たれた私はもう、意識が半分向こうへ飛んでいってしまいそうだ。

 お、おばあちゃん。どうか私を助けて……。


「三ツ杉村へね、成実ちゃんを連れて行きたいんだよ。直哉も一緒にね」
 
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