御曹司さまの言いなりなんてっ!

「それでは、さきほどの議題の結論はひとまず、会長の御視察の後ということでいかがでしょうか? 専務、部長」

「ああ、それがいいだろうな。どうだ部長」

「はい。私も異存ありません」


 ふたりの意見が合致して、皆も安堵したようだった。

 その後はなんの問題も起こることなく効率的に会議が進行していく。

 それもこれも全部、会長のおかげだわ。感謝しなきゃ。

 私の手に何度もキスしたセクハラまがいの行為は、帳消しということにしておこう。


 会議を無事に終えた私と部長は部長室に戻り、心配顔で待っていた牧村さんに、事の顛末と視察の件を説明した。


「承知いたしました。こちらからの参加者は、部長と遠山さんと私でよろしいですね?」

「お前は無理だろう? 今はインターンシップの指導も任されているんだから」


 夏休みを利用した職業体験に、我が社にも大勢の大学生達が参加していた。

 牧村さんも数日前から指導員の仕事をこなしていて、こっちの本業と合わせて二足の草鞋状態。

 いかに有能な彼でも、さすがに三足の草鞋は履けないだろう。


「ですが、秘書である私がご同行しなければ色々とご不便でしょう」

「心配するな。俺の女房役は遠山にしっかり務めてもらうさ。お泊り旅行の間、ずっとな」


 “お泊り旅行”という単語にワザとアクセントを置いて、部長が意味深な目をして私をからかった。
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