御曹司さまの言いなりなんてっ!

 首を傾げる私の耳に、ガヤガヤと可愛らしい声が聞こえてきた。

 振り返った私は「あらま」と目を見張り、そして思わず微笑んでしまう。

 紅白帽をかぶった4、5才くらいの小さなお客様の集団が、お手てを繋ぎながらワラワラとこっちに向かってきていた。


「今日はね、村の保育園の遠足なんだよ。あの全員の面倒を、わいら婦人会が見るんだよ」

「うわあ、可愛い! すっごく可愛い!」

「可愛い? ふふん。そったら甘いもんでねえよお」


 小さな子どもの群れの可愛らしさに母性本能をくすぐられ、黄色い声を上げる私に婦人会の面々が不敵に笑う。

 その意味深な笑いの真意を、私はすぐに身をもって知ることとなった。

 ……とにかく、まあ、その凄まじいパワーときたら!


 右でケンカが始まって騒いでいると思えば、左で子ネコにちょっかい出して引っ掻かれて泣き出すし。

 よせばいいのに、無謀にも木登りにチャレンジして落っこちてるヤツがいるし。

 目を離した隙にとんでもない遠くまで突っ走ってる、松岡修造みたいな熱血野郎もいる。

 「ママぁ」と泣き出す子をひとり抱っこすれば、「ボクも、あたしも」とゾンビみたいに四方八方から小さな手が伸びてくる。

 走って転べばギャアギャア泣くし、誰かをトイレに連れて行って帰ってくれば、次から次へと希望者が現れる。

 なんでさっき言わないの!?


「走っちゃだめよ! 危ないから木に登らないで! だから、ネコのシッポは引っ張っちゃダメ! こらこら、トイレが終わったらちゃんとズボン履いてー!」


 もう、なんなのこれ!

 まるで野生の子ザルの集団を放牧してるみたい!
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