御曹司さまの言いなりなんてっ!
「……はい。遠山です」
『ああ、僕だ』
「お疲れ様です。部長に御用でしょうか?」
つっけんどんになりがちな口調を抑えながら、私はそう聞いた。
だって、専務が私に用事があるなんて思えない。たぶん部長が運転中か何かで連絡がとれなくて、こっちに回してきたんだわ。
ああ、せっかく晴れ晴れとした素敵な気分だったのに、この声聞いたら犬のフン見つけたみたいに一気に不快になってしまった。
『いや、部長がいま外回り中なのは知っている。キミに用があって電話したんだ』
「私に? 専務が私にどのような御用事でしょうか?」
『僕じゃない。お祖父様がキミに会いたがっているんだ。今すぐこっちに来てくれ』
「え?」
私の眉間の皺がますます深くなった。
今すぐ来いって? 急にどうしたのかしら? あ、まさか!
「具合でも悪くなられたんですか!?」
『お祖父様は元気だよ。変な早とちりしないでくれ。何でもキミに大切な話があるらしい』
「話? なんのですか?」
『知らないよ。ただし、このことは部長には内密にして欲しいそうだよ?』
「……え?」
予想外の展開に、私の胸に一抹の不安が芽生える。
会長が、部長に内密で私に会いたがっている?
「それ、どういうことなんでしょうか?」
『だから、僕だって知らないよ。お祖父様に部長が村にいないことを伝えたら、急にキミに連絡をとれって言い出したんだ』