御曹司さまの言いなりなんてっ!

「もっと飲みなさい。このお酒はね、ちょっと珍しいんだよ」

「い、いえ。もう」

「遠慮しなくていいから。さあさあ」


 休む間もなく盃に酒を注がれ、結局三杯、立て続けに飲んでしまった。

 体を動かした後で疲れていたこともあり、ちょうど空腹だったこともあり、アルコールが一気に全身に回る。

 ああ、なんだか雲に包まれたようにフワフワして、頭がぽうっとする。

 シャンとしようと思っても体に力が入らず、盃を持つ手がダランと膝の上に落ちてしまった。

 と、その手を会長の手がそっと包み込む。


「成実ちゃん、キミと二人きりになりたかった」

「…………」

「私の思いを汲んでくれた直一郎が、この部屋を用意してくれたんだよ」


 会長の言葉が、右の耳から左の耳へ抜けていく。

 ちゃんと聞かなきゃとは思っても、なにせ霞がかかったように頭がボーッとしているもんで、内容が定着してくれない。

 私は薄ぼんやりした目で、妙に真剣な会長の顔を見ていた。


「キミにも、私のこの真剣な思いを受けいれて欲しい」


 会長の真剣な思いかあ。それ、どんな思いだろう?

 ところでキミって誰のこと?


「私はぜひ、自分のこの手で、キミを幸せにしたいんだ」


 幸せかあ。いいなあ。なりたいなあ。

 部長と一緒にさ。へへ。


「成実ちゃん、今後は私にキミのすべての面倒を見させてくれないか? きっと後悔はさせないと約束するから」 


 面倒かあ。面倒ねえ……。

 …………。

 え?
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