御曹司さまの言いなりなんてっ!

「部長ーーーー!」

 タッグマッチで交代を要求するプロレスラーばりに、私は思いっ切り手を襖に向かって伸ばした。

 目の前の襖が勢いよく開き、そこに血相変えて立つ部長の姿を見て、安心して泣きそうになってしまう。

 ああ、初めて出会った時と同じ! ピンチの時に現れてくれる彼はやっぱり私の救世主だ!


 突然現れた部長に怯んだ会長が腕の力を緩めた隙に、私は犬みたいに四つん這いになって部長の方へとジタバタ逃げ出した。


「部長! 部長!」


 半泣きで縋りつく私を包み込むようにして、部長がギュッと抱きしめてくれる。

 彼の体温を感じて、自分が本当に助かったんだと実感できて目に涙が滲んだ。

 鼻を啜る私の背中越しに会長の戸惑う声が聞こえる。


「直哉? お、お前、どうしてここに?」

「小林さんと相馬さんから連絡をもらったんです。私に内密で遠山が呼び出されたと」


 小林さんと相馬さんが?

 そうだ。田舎じゃ『これは秘密』と言えば言うほど、音速を超えるスピードで噂が広まるんだ。

 良かった! 小林さん、相馬さん、部長にバラしてくれてありがとう!


「いったいこれは、どういうことですお祖父様」

「すまない直哉。告げずにいるつもりだったけれど、どうしても私は自分の気持ちを我慢できないんだ」

「やめてくださいお祖父様」


 怒ったようにそう言って、部長は私の体をしっかりと支えながら立ち上がらせた。

 そして彼は深呼吸して息を整え、なおも厳しい怒りを含んだ声で会長に宣言する。
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