御曹司さまの言いなりなんてっ!
そんなある日、大手の銀行家と偶然知り合う機会に恵まれた。
私は、さらなる勝利を目指して大口の融資を取り付けようと躍起になったんだ。
その銀行家の元へ足を運んでは、今後の事業の展望を熱心に語り合ったよ。
その甲斐あって私達はすっかり意気投合し、『キミは若いが見込みがある男だ』と気に入られて、家に招かれるほど親密になれたんだ。
そこで私は、その銀行家の娘と出会った。
彼女はタキとは正反対の性質の娘だったよ。
非常に勝気で、臆することなく意思表示をし、自分に確固たる自信を持っている娘だった。
周囲を従えることに慣れた彼女が、どうやら私に熱を上げているらしいと気付くのに、たいして時間はかからなかった。
当然、はぐらかしたさ。私にはもうタキがいる。
だが自尊心の強い彼女に恥をかかせないよう、のらりくらりとかわしていた態度が誤解を招いたらしい。
恋の駆け引きをされていると勘違いしたようで、余計に彼女の心に火を点けてしまった。
すっかり冷静さを失った彼女は、『彼が欲しい』と子どものように泣いて暴れて癇癪をおこし、もう手が付けられない。
ほとほと困り切った銀行家の父親から、ついに暗に切り出された。
『なんとかして娘の機嫌をとってくれないか? 恩に着るから』
……私は、ためらった。
そう、ためらったんだ。
私にはもう内縁の妻がいるからと、その場で即答しなかったんだ。