御曹司さまの言いなりなんてっ!

「兄さんご自慢の牧村に調べさせたんだろ? 彼は本当に優秀な秘書だね」

「あの日、直哉から事前に連絡を受けていたんだよ。びっくりするような誕生日プレゼントを用意してあるってね。まさか、こんな素晴らしいプレゼントだとは」


 部長を見つめ続ける私に向かい、会長は声を詰まらせながら訴え続ける。


「タキが亡くなったことは、直哉から聞いたよ。だが彼女は私に贖罪の機会を遺していってくれたんだね。成実ちゃん、何でも希望を言ってくれ。私はキミの言う通りにする。成実ちゃんにはその権利があるんだから」


 震える声に嗚咽が混じり、ついに会長は憚ることなく泣き出した。

 そして、しゃくり上げながらズリズリと畳の上を這いずって私の方へ近寄ってくる。


「成実ちゃんは直哉と恋仲なんだろう? 二人が結ばれてくれるなんて、こんな嬉しいことはない。私は全力で応援するとも。二度と直哉が家族から不利益を被らないよう、将来を保証すると絶対に約束するから」


 私の足元で会長は、ガバッと這いつくばった。


「だから……頼む! どうかキミの口から私を許すとひと言、言ってくれ!」


 土下座して畳に額を擦り付けながら泣き咽る会長の声を聞き、私は全てのからくりを悟った。

 そういうことだったのか、と。

 入社試験の茶番じみた合格も、破格の抜擢も、豪華なパーティードレスも。

 社長一家にイビられる私のことを、これ見よがしに身を挺して庇ったことも。

 あれは何もかも全部、全部……。


「部長は私を、自分の立場を守るために利用したんですね……」

「違う!」


 間髪置かずに部長は叫び返した。
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