御曹司さまの言いなりなんてっ!

「ねえ成実聞いて。牧村さんは悪くないのよ。だって部長に命令されたら秘書としては従うしかないじゃない」

「別に牧村さんを責める気持ちはないわよ。わだかまりはあるけど」

「成実ったらそんな」

「いえ、遠山さんのお気持ちは当然のことです」

「それで、今日はどんな御用ですか? 私の退職の手続きのことですか?」


 私の言葉に、牧村さんと瑞穂はまたお互いの顔を見合わせながら言葉に詰まっている。

 なんだか神妙そうな二人の表情に、私は小首を傾げた。


「……会長が入院しました。突然倒れてしまったんです」

「え!?」


 会長が倒れた!?


「三ツ杉村から戻ってきて、ずっと体調が優れなかったらしいんですが」

「で、でも会長って、お年の割にはずいぶん元気でしたよね!?」

「元気といってもさすがに80過ぎよ? 倒れてから高熱が全然下がらなくて、どうも肺炎を起こしているらしいのよ」

「年寄りの肺炎って、それ一番危ないケースじゃないの!」

「大きな心労が重なってしまいましたから。実は、部長が退職願いを出したんです」

「……はああぁぁ!?」

「偶然にも遠山さんが退職願いを出した日と、同じ日に。もう社長はパニックですよ」


 パ、パニックって……。

 私だって大パニックよ!!

 なにそれ、どういうことなの!? 私がせっかく会長から確約を貰ったっていうのに!

 それじゃ会長だってショックで寝込むわよ! 部長、なにやってるんですかあなたは!
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