御曹司さまの言いなりなんてっ!
「まさか私のことで責任を感じて?」
「もちろんそれも理由でしょうが、今回のプロジェクトに関わった業者と、役所と、一之瀬商事の上部が裏で取り引きしていたようです」
「それって癒着ですか!?」
「はい。予算の大半はそちらに流れてしまいます。利益を得るのは企業と大きな町ばかりになるでしょう」
「三ツ杉村はどうなるんですか!?」
「ほとんどカヤの外ですよ。一応プロジェクトの体裁だけは整えるようですが、鼻薬を嗅がされただけで放り出されます」
「そんな……」
「ガッチリ組んだ上部に部長個人の力では太刀打ちできません。もう堪忍袋の緒が切れたんでしょう。ついに部長は退職願いを叩き付けたんです」
私は大きな衝撃を受けた頭を抱え込んでしまった。
林檎園で玉のような大汗を流しながら、黙々と農作業に精を出していた相馬さん。
私のためにわざわざ地元料理を持参して見舞ってくれた、婦人会の人達。
林檎園で歓声を上げながら駆け回っていた、無邪気で純粋な子ども達。
村の澄んだ空気と、濃い緑と、豊かな林檎と、輝く湖が目に浮かぶ。
そして部長に深い信頼を寄せて期待してくれていた、三ツ杉村の人達の笑顔が。
「成実、会長を引退させるらしいって噂があったの覚えてる? このことも絡んでいたのよきっと。会長だって倒れるわよ。最後の最後で身内にこんな形で裏切られたんじゃ」
「部長は出社していませんし、自宅にもいません。恐らく三ツ杉村にいるのではないかと思うんですが」