御曹司さまの言いなりなんてっ!

 瑞穂の目が、射抜くように真っ直ぐ私を見据えていた。

 強くて明確な彼女の視線に、まるで自分の心を覗かれたように不安になる。

 だから殊更明るく笑いながら否定した。


「ううん。本当にもう全然気にしていないから」

「嘘。会長のことも、三ツ杉村のことも、部長のことも、全部気にしまくってるじゃないの」

「気にしてないってば。もう終わったことなのよ? だから綺麗に水に流すのが一番いいの」

「全然流れてない。成実の中に溜まりきってる。完全に配管詰まり起こしてる状態よ」

「……なによ、それ」

「ヘタクソな作り笑いして、おためごかしはやめて。気持ち悪くて寒気がする」


 さすがに、私は顔から笑顔を引っ込めた。

 遠慮も配慮もない瑞穂のズケズケした物言いに、すごく不愉快になる。

 瑞穂に向かって足を一歩前に進めて、肩に力を入れながら言い返した。


「確かに作り笑いだけど、それがなによ? 悪い?」

「悪いなんて言ってないわよ。見え見えの言い訳が寒気がするって言ってるだけ」


 負けずに瑞穂もこっちに向かって一歩踏み出し、反論してくる。

 挑むような目付きが実に正々堂々としていて、それが余計に腹が立った。

 私は更に一歩前に踏み出し、瑞穂に言い返す。


「見え見えの言い訳? 大人の対応しようと努めているだけよ」

「だから、それが寒気がするって言ってんの。『被害者の私さえ我慢すれば、それで全部地球は丸くおさまるんだわ』的な、自分に酔ってるヒロインの顔が」

「はあぁ!? なにそれ!?」
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