御曹司さまの言いなりなんてっ!

 カァッと一気に頭に血がのぼった。

 目を剥いて声を荒げる私に対し、瑞穂もまた一歩前に踏み出して睨みつけてくる。

 ほとんどオデコとオデコがくっつく至近距離で、私達は完全に臨戦態勢に入った。

 突然始まった女ふたりの一騎打ちに、牧村さんは唖然として立ち尽くしている。


「知ったようなこと言わないで! 私がどんな辛い思いをしたと思ってるの!?」

「“知ったよう”じゃなくて、知ってるのよ! 成実の中ではまだ全然解決してないし、だからと言って水に流すことも出来ていないって!」

「そうよ流してないわよ! 詰まってるわよドロッドロよ! それが悪いの!? 無理もないじゃないの!」

「だから、さっきから悪くないって言ってるじゃない!」


 叫ぶや否や、瑞穂は勢いをつけてグッと身を乗り出してきた。

 ―― ゴツン!

 と鈍い音がして頭全体に振動が走り、頭突きを食らった私は思わず一歩後ずさる。

 顔をしかめながら額に手を当てる私に向かって、瑞穂は容赦なくガンガン怒鳴り続けた。


「成実は全然悪くないわよ! あんたは悪くないんだから無理に水に流さなくていいんだってば!」

「…………」

「こだわっていいのよ! 怒っていいの! なのに何で、何もしないで部屋に籠ってメソメソしてるの!?」

「…………」

「終わったから関係ない、なんてスカしたこと言ってないで、言いたいことがあるなら言って、やりたいことがあるなら、やんなさいよ!」


 こぶしを握り締め、ひときわ大声で瑞穂は叫んだ。


「あたしが許すわよ! だって成実は悪くないんだから!」
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