御曹司さまの言いなりなんてっ!

 …………。

 シーンと、少しの間、静寂が訪れた。

 直球でド真ん中に届いた瑞穂の言葉に、私の心はビリビリと震えている。

 その痺れと、熱さと、泣けるような痛みを、しばらく噛みしめていたかった。

 私の心を覆っていた固い膜のようなものが、ヒビ割れてポロポロこぼれ落ちていくのを感じる。


 瑞穂は肩で息をしながら、真剣な顔で瞬きもせずにそんな私をじっと見つめている。

 牧村さんは、目を丸くしてそんな瑞穂を見つめている。

 そして私は、隠していた自分の本音を見つめていた。

 そして……。


「……牧村さん、瑞穂。私、部屋に戻ります」

「成実ったら、まだそんな……!」

「勘違いしないで。いくらなんでもこの恰好じゃお見舞いに行けないでしょ?」

「遠山さん? それでは会長を見舞って下さるんですか?」

「はい。行ってどうなるかは分かりませんけど」


 私はゆっくり頷きながら答えた。

 穏やかな面会になるかもしれない。逆に、厳しい言葉を浴びせてしまうかもしれない。

 でもおそらく会長は、私に罵倒されることなんて覚悟のうえで私との面会を望んでいるんだろう。

 部長も、針のムシロを覚悟のうえで三ツ杉村の皆に謝罪しに行っているはずだ。

 私だけが何もしていない。

 だから、見舞いに行こうと思う。この先ずっとダンゴ虫みたいに物陰で丸まって、ソーメンとゆで卵を食べてばかりはいられない。
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