御曹司さまの言いなりなんてっ!
到着した有名大病院は、威風堂々とそびえ立つお城のように見えた。
人で溢れかえる広大な院内はまるで迷路みたいで、牧村さんがいなければ迷子になってしまいそう。
専用エレベーターじゃなければ入れない特別病棟の出入り口は、自動ドアロックで管理されていた。
牧村さんがカードで開けてくれて、中に一歩踏み出した私の目が点になる。
目の前のホールはデイルームも兼ねているらしく、立派な観葉植物や、大型テレビや、洒落たテーブルセットが置かれてあった。
どこの大浴場かと思うほど巨大な展望窓からは、高層階の見事な眺めが一望できる。
小さいけれど美しくしつらえた、日本庭園風の中庭まであった。
静まり返った内廊下の藍色のカーペットの上を、ついついキョロキョロしながら私は進んだ。
牧村さんが突き当りの部屋の前で立ち止まり、ノックする。
「牧村です。遠山さんをお連れしました」
中からの返事を待たずに彼が静かにドアを開けると、再び私の目が点になった。
……これ、病室じゃないって絶対。高級マンションのショールームだってば。
なんでこんなに広い必要があるのかというほど広い室内は、豪華な革張りの応接セットが陣取り、天井には輝くシャンデリアが。
ペイズリー柄のカーテンも、ソファーの上のクッションも、どうやらシルク製。
花瓶や時計ひとつとっても品の良い備品に囲まれた室内の奥に、木製のベッドが置かれてある。
そこに、ひっそりと会長が横たわっていた。