御曹司さまの言いなりなんてっ!
「成……いや、遠山。お前そんなお手間なことをお願いしたのか?」
「はい。この前食べた皆さんの手料理、すごく美味しかったですから」
「だが、ご迷惑だろう」
「郷土料理をみんなで味わう良い機会だと思ったんです。若い世代ってどんどん地元料理を知らなくなってきてますから」
私は小林さんと婦人会の皆さんに頭を下げてお礼を言った。
「皆さん、今日はご協力ありがとうございます」
「いやー、こっちこそ嬉しいね。日頃は全然顔を見せないバカ息子とも、こうして久しぶりに会えたしねえ」
その時、だいぶ闇の色が濃くなった道の向こうからエンジン音と車のライトが近づいて来た。
そして大人数がワイワイ集まる古民家の前に、見覚えのあるトラックが停まる。
運転席からノッソリ姿を現した相馬さんに、部長が驚きの声を上げた。
「相馬さん! あなたまで?」
「祭りに協力してくれって、頼まれたんだ。んだから林檎と林檎ジュースの即売会ば、やる」
「あ……ありがとうございます。わざわざすみません」
「んー、まあ、気にすんな」
ボソボソと話し終えた相馬さんは、トラックの荷台から林檎ケースや箱ジュースを黙々と下ろし始めた。
牧村さんと瑞穂がそれを手伝う。
婦人会の皆さんが古民家の中に長テーブルを運び込み、持ち寄った手料理を大皿に盛って並べ始めた。