御曹司さまの言いなりなんてっ!
思いがけない大きな開花は、皆が一瞬息を飲んでしまうほど。
おおっ! という感嘆の声と同時に空気を震わす破裂音が『ドンッ!』と響いた。
私は部長と並んで空を見上げながら、驚きの声を上げる。
「すごい! 小玉って聞いてたのに、こんなに大きいなんて!」
「そりゃあ、打ち上げ場所からこれだけ近ければ小玉だって大きく見えるさ」
「なんだかすごく得した気分です! この迫力なら充分に皆さんにも満足してもらえますよ!」
暗幕のような夜空に花火が打ち上げられては、湖上へ散り落ちていく。
白く輝く菊花が優美な花びらを四方八方に伸ばし、真紅の牡丹が見事な真円を描いて咲き誇る。
一瞬の華が開くたびに轟く破裂音が、胸の芯までビリビリ響いた。
チラチラと小さな光が空に舞い、最後の最後まで人の心を惹きつけて、そして吸い込まれるように消えていく。
惜しむ心を、呆気ないほど置き去りにして。
まるで……人の命みたいだ。
美しくも儚い圧巻の空を見上げながら、私はそう思った。
「好きだ」
次の花火が上がるのを待つ合間に、部長がそっとささやいた。
思わず私は彼の横顔を見上げたけれど、部長は瞬きもせずに夜空をじっと見上げたまま。
花火のことを言ったのかしらと思ったら、空を見たままで彼は再びささやく。
「俺は成実のことが好きだよ」
「部長……」
「でも自分の本音をさらけ出すのが怖かった。成実に対して秘密を持っていることも後ろめたかった。だから、自分から気持ちを伝えることができなかった」