御曹司さまの言いなりなんてっ!
「夫人は部長が有力者の面々とコネクトしないように、ああやって常に目を光らせているんです」
「見事な外交手腕ですね。いっそ外務省にでも就職すればいいのに」
「ええ。夫人の持つネットワークは非常に強大です。まるで帝国ですよ。逆らえる者はいません」
あの様子じゃ、気弱そうな社長の力ではとても太刀打ちできないだろう。
社長は部長を冷遇しているようには見えないけど、後妻の魔の手から息子を守っているとは、お世辞にも言えない。
ニコニコと作り笑顔をして息子の隣に立っているだけの情けない父親の姿に、私はイラついてしまった。
「部長、こんな酷い状況でよくグレないですね……」
「いっそグレたら楽なのでしょうが、賢いせいでそれもできないんです。グレたところで、どうにもならないことをよくご存じなのでしょう」
彼は、3代目ボンボンじゃなかった。
当然3代目になるはずだったのに、その権利を継母と弟に奪われてしまった、気の毒な長男だったなんて……。
「待たせたな。それでは会長のところへ挨拶に行こう」
招待客へ挨拶を済ませた部長が、こちらへ戻ってきてそう言った。
そして何事もなかったような平然とした態度で、出入り口へと向かって歩き出す。
牧村さんが全てを承知している表情で頷き、部長の後を追った。
私もふたりの後に続きながら、後ろを振り返る。