御曹司さまの言いなりなんてっ!
「70年前に見渡す限りの焼け野原になった村を見て、いつか必ずこの手で立て直してみせると誓ったんだよ」
「焼け野原? 戦争、ですか?」
「うん。家も焼けて、私以外の家族は全員死んだ。私は失った物を取り戻すことだけを目標に、頑張って、頑張って、頑張って働いたんだ」
牧村さんがお茶をいれてくれる音に混じって聞こえる、会長の朴訥な声。
遠い過去を懐かしむような、哀しむような、そんな深い重みのある言葉だった。
「ところが会社が大きくなるにつれて、田舎の中では収まり切らなくなってね。こちらへ出てきて以来、故郷とは縁が切れてしまったんだ」
「お祖父様のせいではありませんよ。縁者のいない地には、足が向かなくなっても仕方ありません」
「過疎の進む、あの大切な場所にどうしても恩返しがしたい。もう一度、村を栄えさせたい。役立つことをしてから死にたいんだよ」
会長と部長の交わす会話を聞きながら、私は地域振興というプロジェクトの持つ意味を理解した。
つまり会長は、故郷に錦を飾りたいってことなのね?