御曹司さまの言いなりなんてっ!
戦争で焼け野原になってしまった生まれ故郷。
自分の力で村を復興させる日を夢見た、若き一之瀬青年。
努力のおかげで立身出世はしたけれど、がむしゃらに働き過ぎて、気づけば故郷はすでに遠い空。
多くの物を手に入れた人生だけど、終盤を迎えて自分はまだ、そもそもの初心を果たしていなかった。
成功した男性にとって、それは大きな心残りなのかもしれない。
奪われてしまった家族と共に少年時代を過ごした地なら、思い入れも深いだろう。
でも平たく言えばそのプロジェクトって、ぜんぶ会長のワガママなわけか。よく会社が許したわね。
まあ創始者なんだし、これだけの大企業なんだし、それくらいの希望は聞き入れたって罰は当たらないとは思うけど。
「遠山くんは、どう思うかね?」
「え?」
「私が三ツ杉村に対して行う行為を、どう思う?」
牧村さんがいれてくれたお茶に手を伸ばしながら、とつぜん会長が私に話を振ってきた。
チラリとこっちを見る目が、私の心中を推し量ろうとしているように見える。
隣の部長も真面目な表情で私を見ていて、私は矢庭に緊張した。