御曹司さまの言いなりなんてっ!

 ……ひょっとして、これはテストかしら?

 いけない。つい第三者的な気持ちで話を聞いていたけど、私はそのプロジェクトに参加する立派な当事者なんだ。

 その自覚を今、試されているのかもしれないわ。

 ヘタな受け答えをすればチームから外されてしまうかもしれない。


「大変、有意義なプロジェクトだと思います」

「そうかね? 物好きな年寄りの、困ったワガママだろうに」


 う……。

 内心、焦って言葉に詰まってしまった。

 だって実際、その通りだって思ってたもの。


「……利潤を社会へ還元することは、企業の務めです。それに地域振興や福祉への貢献は、さらなる利益となって企業に戻ってくるはずです」

「無意味だとは思わんかね? ムダだとは?」

「ムダ?」

「そう、ムダだよ。こんなのはただの私の自己満足だよ。……だから笑ってもいいんだよ?」

「そんなことは思いません。だって会長は心の底から、故郷の人達のためを思っているんですから」


 誰かに、褒められたいわけじゃない。

 だって褒めてくれる親兄弟なんて、すでにもう、その地にはいない。

 自分が今さら何をしたって、記憶の中の人達が喜んでくれるわけじゃないことは、百も承知なんだろう。


 それでも、かの地に手を差し伸べずにはいられない。

 日を追うほどに募る郷愁。失われた物のために、何かをせずにはいられない。

 耐えられないほどの切ないその思いを……ただの自己満足だと笑うことなど、誰にもできないと思う。
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