御曹司さまの言いなりなんてっ!

「何かをしたいと思ってする行為が、ムダだなんて私は思いません」

「…………」

「きっと誰かに、何かが伝わるはずです。それは無意味ではありません」


 ハツキリそう答える私の目を、会長はじっと覗き込むようにして見ている。

 やがて満足したようにフッと微笑んで、手にしたお茶碗を口元に運んだ。

 そして喉を鳴らしてゴクリと飲み込み、「うん、美味いねえ」と言って、ずいぶんと嬉しそうな顔で笑った。


「さあ、遠山くんも飲みなさい」

「あ、はい」

「ほら、お菓子も食べなさい。これ頂きものだから。タダだから。遠慮しないでいいから」

「は……はい」


 上機嫌の会長が、しきりにお茶とお菓子を勧めてくれる。

 計算したわけじゃなくポロッと口から出た本心だったけど、会長は私の言葉を気に入ってくれたようだ。


 黒い漆の茶托の上に乗った、広口で鶴亀柄のお茶碗の中の緑茶が仄かに香り立っている。

 揃いの柄の皿に添えられたお菓子は、小さな瓢箪形の最中。

 お茶もお菓子もきっと、私なんて手が出ないような高級品に違いない。

 よし。滅多にない機会だから、思い切って記念に一口……。


 そう思って、ヒザの上に行儀良く置いていた手を動かそうとした時。

 隣から伸びてきた手が私の手の平の上にそっと重ねられて、私の心臓がドクンと跳ね上がった。

 ぶ、部長……?
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