御曹司さまの言いなりなんてっ!

「秘密だなんて、大袈裟ですよお母さん」

「直哉さんに秘密にされるなんて悲しいわ。やっと仲良くなれたのに、まだ私は家族として認めてもらえないのかしら」

「そんなことはありませんよ」

「寂しいわ。悲しいわ。きっと私の、母親としての努力が足りないのね」 


 …………。

 ウザい。


 社長夫人のあまりに不愉快でワザとらしい態度に、胃のあたりがモヤモヤと暴れ始めて、思わず夫人を睨み付けたくなる欲求を懸命に抑えた。

 落ち着かなきゃ。いくらムカついたとしても相手は社長夫人。

 正面からメンチを切るわけにはいかないわ。


 でも……よく恥ずかしげもなく言えるわねそんなセリフ。

 まるで自分こそが悲劇のヒロインみたいな言い方してるけど、家族として認めていないのはそっちの方でしょうに。

『母親としての努力が足りない』って部分だけは、まさに大正解だけど。


 心の中で悪態をつきながらムカムカを我慢している私の目の前で、社長夫人はさらに火に油を注ぐがごとく、演説をぶっている。


「直哉さん、私のことだけじゃなくて、きっと直一郎さんのことも恨んでいるんでしょうね……」

「恨むだなんてそんな、お母さん」

「ううん、いいのよ当然だわ。弟の方が役職が上だなんて、おかしいもの。分かってるの。お母さんもよぅく分かっているのよ?」

 
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