御曹司さまの言いなりなんてっ!

 …………。

 分かっているなら最初からやらなきゃいいでしょ? そんな非常識なマネ。


「でもね、会社のために仕方ない事情があったのよ。もちろんそれは、賢い直哉さんのことだから理解してくれていると思うけど」

「はい。分かっています」

「ただね、それが原因で兄弟の仲が悪くなるのだけは、お母さん嫌なの。直哉さんに、直一郎さんのことを邪険にして欲しくないの」


 …………。

 兄弟仲を悪化させてるのも、邪険にしてるのも、明らかにあなたの息子さんの方なんですが。


「血の繋がった、この世でたったふたりきりの兄弟ですもの。兄として直哉さんに、直一郎さんをしっかり守って欲しいの」

「もちろんそのつもりです」

「本当? 本当に直一郎さんを守ってくれるのかしら?」

「ええ、もちろんですお母さん」

「んまあぁ! 皆さん、お聞きになって!」


 いきなり社長夫人が舞台女優のような大声と身振り手振りで、周囲にアピールし始めた。

 何事かとこちらを注目する招待客達の前で、今にも泣き出さんばかりだ。


「義理の息子が、これからも部長として専務を一生支え続けると約束してくれましたの! 縁の下の力持ちとして、ずーっと弟を盛り立ててくれるって!」


 ……誰が、いつ言ったのよそんなこと!

 一生縁の下の力持ちって、『お前は一生地面の下から出てくるな』って意味でしょう!?

 セミの幼虫以下の扱いじゃないのそれ!
< 79 / 254 >

この作品をシェア

pagetop