強引上司の恋の手ほどき
それから毎日監査が終わるまで、本当に忙しく日々の仕事をこなすことに集中していた。
山のような資料や、データに目を通し、ひとつひとつ根拠を示す資料の準備をするのは時間がかかるし骨の折れる作業だ。
該当の部署に尋ねても担当者が異動になっていたりして、なかなか過去のことについて調べるのは難しい。
「課長ここなんですけど、ちょっと見てもらっても構いませんか?」
八方塞がりになって、課長へと相談した。
あの日を境に、私は少し課長と距離をとることにしていた。
実際は、仕事が忙しくそんな話をする機会がなかっただけなのだけど。
「あぁ、ここか?」
私のパソコンを課長が身をかがめて覗きこんだ。急に顔の位置が近くなってドキンと胸が音を立てた。
仕事中なのに、こういうことがふいにあると集中が切れてしまう。
「ここなんですけど、これってこの月に仕訳があるのっておかしいですよね」
「あぁ、……そうだなこのプロジェクトの売掛なら、ここにあるのはおかしい」
「そこで行き詰ってしまって」
不意に課長を見ると、すぐ近くに真剣な課長の顔があって驚く。すぐに顔をそらせたけれど、心臓の音は収まりそうになかった。