強引上司の恋の手ほどき
——やっぱり。あの感触は……

キスした……んだ。

思考がそこに辿り着いた時、顔に体中の熱が集まってきた。未だかつてないほど赤くなった私をみて、課長が慌てて私の上からどいた。

「……悪い」

「いえ、あの……事故ですから」

「そ、そうか。まあ、あの。ほら、さっさと片付けるぞ」

そう言って、私から顔をそむけた課長の耳が赤い気がする。

散らばったファイルを集めていると、課長の電話が鳴った。

「ちっ……金子か。もしも——」

『課長—!! どこにいるんですかっ! 忙しいんですから帰って来てください』

課長は耳から電話を離して聞いている。

仕方ないよね。私にまで聞こえてくるような大声だもん。

「わかったって。三秒で帰るから」

『お待ちしております……ブチッ』

はぁっと溜息をついた課長が、私を見た。

「悪いけど、ここ片付けてから来てくれるか?」

「はい。課長は早く戻ってください」

「悪いな」

私の肩をいつものようにポンっと叩くと、資料室を出て行った。
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