強引上司の恋の手ほどき
バタンと扉が閉まる音がすると、私は「はぁ」と大きく息をはいた。

そして手に持っていたファイルを抱きしめて落ち着こうとする。

「キスした……」

いや、正確に言えばキスではない。“事故”だ。でも一瞬だけど唇が触れた。以前中村くんとのことで悩んでいた時に抱きしめられたあの時と、同じ香りがした。

思い出すだけで、ドキドキと心臓が音を立て始める。

−−キスなら中村くんとだって、何度かした。でも違う。全然違う。

ほんの少し唇が触れただけで、こんな気持になるなんて。

本当の恋がどんなものなのか目の前につきつけられた気分だ。

どうしてこうも私は、難易度の高い相手を好きになってしまうんだろう。

課長がカフェで女性と楽しそうに話をしていた姿が思い出された。

いつか私が、課長の横に笑顔で立てる日がくるのだろうか。

この妹みたいな立場からどうやったら抜け出せるようになるのだろうか?
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