強引上司の恋の手ほどき
***

二月二十二日は我が社の創立記念日だ。五年ごとに必ずホテルを借りきってパーティが行われる。そして今年がその年だった。

こいった式典関係は総務部の担当だが、直前には経理部も駆り出されて準備をして今日の日を迎えていた。

「五年あくと、手順知ってる人が半分くらい異動になるから、毎回準備が大変なんだよね」

経理課一筋の美月さんは、こういうときも頼りになる存在で総務課の担当者よりもてきぱきと動いて準備していた。

総務部長でさえ、なにかあれば美月さんに尋ねることもあるくらいだ。私も美月さんの指示にしたがって準備に精を出し、無事開会を迎えた。

「しかし、常務の挨拶長いね。あいかわらず」

社長の挨拶が終わったあと常務が乾杯の音頭をとっている。広間の後ろのほうで、美月さんと並んで立っていた私は、郡司さんを探した。

結局三日間の出張の予定が延びて、直接この会場へと足をむけることになったのだ。

そろそろ到着しているはずなんだけど……。

まわりを見渡すと前方の壁際で総務部長と一緒に立っていた。

私の視線に気がついたのか、私と目があうと口角を少しだけ上げて笑ってくれた。

久しぶりに見た彼の笑顔に安心とときめきが同時に湧き上がる。

私も釣られて顔が緩んだ顔を下に戻そうとしばらく俯いてから、顔を上げた。

そのころやっと常務の話が終わり乾杯となった。
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