強引上司の恋の手ほどき
「あ〜生き返るわ〜。おかわりもらってこよう」

美月さんは持っていたビールを一気に飲み干すと、早速おかわりのビールをとりに行ってしまった。

私は壁にもたれたまま、グラスの中の少しぬるくなったビールを飲んでいた。

——その視線を感じるまでは。

こんなにたくさんの人がいるなかで、鋭く私を睨んでくるひとりの男性が目に入る。

……中村くんだ。

今日まで仕事以外ではできるだけ彼を避けてきた。けれどこういう場所ではやっぱり完全に避ける事はできない。

彼の態度に嫌気が刺した私は、一度会場を離れ、そとにある椅子で休むことにした。

ふと中村くんのことについて考えた。

彼との恋愛が全部間違いだったとは思えない。

けれどやっぱりずっと無理して彼に合わせていて、嫌われないようにするだけでせいいっぱいだった。愛されている実感がなかった。

それは今、郡司さんから愛されている今だからわかることだ。
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