強引上司の恋の手ほどき
私が中村くんを傷つけたのは間違いない。もしも私が逆の立場で中村くんにすぐに彼女ができていたらショックだと思う。

だからある程度のことには耐えようと思ったけれど、社内で回る噂はやっぱり耳に入ると不快だし、たとえ七十五日たったとしても消えることはないだろう。

私が口を開けば、火に油を注ぐことになりかねないのでじっと我慢して耐えているところだ。

でも、郡司さんがいつも側にいてくれる。なにか困ったことがあっても彼が助けてくれると思えば、多少の辛いことにも耐えられた。恋の力は偉大だ。

そんなことをうつむき加減でぼんやり考えていると、視界に男性の足が入ってきた。

ぼーっとしていたので気が付かなかったみたいだ。顔をあげるとそこにはできれば、会いたくない人が立っていた。

「中村くん……」

彼は私の前に塞ぐように立ちはだかった。

「なぁ、お前知ってるか? 俺、九州に転勤だってよ。人事異動の時期でもないのに」

「え? どうして……」

「そんなの、俺が知りたいよ。お前が深沢課長にあることないこと吹き込んだんじゃないのか?」

あることないこと言いふらしているのは、あなたじゃない!

そう言ってやりたかったけれど、私はぐっと飲み込んだ。
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