強引上司の恋の手ほどき
「俺、この会社やめるんだ。九州になんかに左遷されてまでやる仕事じゃねーし。いつまでもこんな小さい会社の歯車でいるつもりなんてない」

「転職するの?」

「あぁ、転職先聞いたら俺と別れたこと後悔するんじゃないのか?」

ニヤニヤ笑うその顔に嫌悪感さえする。絶対後悔しないと言いきれそうだ。

「日芝電器だよ。しかも入社五年以内に課長の椅子も約束されてる」

日芝って業界第一位の会社だ。そんな都合のいい話なんてあるんだろうか?

「実は、社長の娘と付き合うことになりそうなんだ。まぁ、転職はずいぶん前から決まってたことで、社長の娘はおまけみたいなもんだけど」

私は彼の評価を甘くしすぎていたのかもしれない。初めて出来た彼氏だから思い出としても綺麗なものにしたかったみたいだ。

しかし、女性をそんなふうに自身のメリットのためだけに扱う姿に嫌気がさした。

「千波は俺にとってなんの役にもたたなかったもんな。せめてヤるだけヤッとけばよかった。そしたら深沢課長あせっただろうな。あははは!」

「その下品な笑い、いい加減にしたらどうだ?」

私の背後から地面をはうような低い声が聞こえてきた。ふりむくと腕組みをして、中村くんを鋭く睨んでいる郡司さんが立っていた。
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